パリに引っ越してきて3年目に入り、パリの建設業界や工事業者のことがやっとわかってきました。
パリのリノベ事情を一言でいうなら、工事は計画の通り進まないのが当たり前。もし工程通り完工したら「手抜き工事をしたんじゃないか?」と疑われるほど稀なことなのです。そして、工程が伸びると言うことは、職人の工数も増えますから工事請負契約の工事金額もあってないようなもの。工事内容は様々な理由で追加され工事金額が増額していきます。
日本の工程通りに引き渡し!というのは本当に凄いことだと思います。
パリのリノベーション
まず、パリで新築工事はすごく稀なので基本的に住居の工事といえば、外装工事か内装工事かの2種類です。どちらも既存のものを活かし長く使うためのメンテナンスが主な工事内容ですが、内装工事の場合は内装装飾=Décoration intérieureが大切です。
リノベーションの基礎工事の内容としては、キッチンやお風呂などの設備機器を入れ替えることはもちろん、窓をペアサッシに取り替え、外壁内側や屋根や天井下に厚い断熱材を入れます。断熱材を入れると言うことは天井や床、壁を仕上げ直す必要がありますから内装屋さんは大忙しです。
そして、大きな断熱材やプラスターボードなどの建材の搬入も簡単には行きません。建物の階段は狭く、小さなエレベーターには載りませんので、細い道路に大きな配送車を歩道に乗り上げ停車し、荷上げ専用クレーンを使います。
どの材料をあげているかでリノベーション工事の工程がわかるので面白いです。 例えば、断熱材だと初期で、タイルやモールディングなどの内装材だと後期。日本だとプラスターボードとビニール壁紙を大量に使うと思いますが、パリの中心部の建物の壁面は石造で壁は長年塗り重ねたペイントなので、プラスターボードやビニール壁紙はリノベーション工事に使われないという違いも面白いところです。
我が家は引っ越してきた時は工事が完了している状態でした。屋根と壁に厚い断熱材が入っていますので夏は涼しく冬は暖かい、暖房機は電気式ですが冬に家の暖房機を全てつけると暑いくらいです。
プラスターボードの壁はなく、家中は天井も壁も全て塗装です。左官壁にペイントなのでビスが固くて入りません。

10年ごとの外壁工事
今日は私が今住んでいる賃貸は築270年なので建物の問題は常時あります。大雨の日は雨漏れがあっても仕方がないし、風の強い日に外壁が剥がれて落ちたなんてことは珍しいことではありません。
中庭側だったらまだ良いですが通行人の多い道路側だと危険ですよね。なので、建物のオーナーは外装を10年に一度メンテナンスしなければなりません。
そして、外装工事についてはパリの住居のほとんどがアパルトマンなので共用部として工事を行い、所有者で工事費用を分割となります。
10年ごとなのでパリの街中で外装工事の足場を見るのは珍しくありません。
お友達が所有しているアパルトマンの外装工事の話ですが、10年ごとの外装工事終了後、所有者に分割されてきた請求額が100万以上で驚いたという話がありました。日本のように何社も相見積もりをとって、減額交渉をすることなどフランス人はおそらくしないのでしょう。
10年毎の外壁工事払えない人はフランスで家買ったらダメよ。という感じなんだと思います(笑)

工事費は高く遅れるのが常
フランスの工事業者に怒られるかもしれませんが、今までの聞いたフランスの業者で、工程通りに問題なく終わったというケースを聞いたことがありません。日本の工程管理と安くて早いが良いという工事業界は本当にすごいと思います。
なぜフランスでは工事が遅れるのか?という問いに対して答えは明快です。 工程通りに進まなくても残業はもちろんしないし、バカンスに入ると誰も働かなくなること、古い建物なので解体して想定外の問題が出てくること、職人不足とフランス語の通じない移民の職人たち。。。
現場でトラブルが発生したら工程は止まるし、放置されることも珍しくありません。
現場監督も「仕方ないよね」と言う感じで工程はあってないようなもの。その時の建物と職人の運任せな感じもします。
施主は工期も予算、そして心の余裕を持っていないと進行できないのがパリの建設事情です。
エネルギー性能診断のDPE
しかし、そんなことも言ってられません。
パリのリノベーション事情は切迫していまして、フランスでは建物診断書にエネルギー性能診断(DPE)を明記しなければなりません。DPEとは、電気の年間消費量、断熱性能などの情報がランク付けされているもので、2025年以降フランスでは、エネルギー性能の低い物件は不動産取引が禁止されることもあり、売主はエネルギー性能診断書のランクを上げるために内装工事に必死です。取引価格に大きく影響しますから。
エネルギー性能診断(DPE)により、不動産はAからGまでのランク付けをされ、EとFは賃貸に出すことができなくなります。断熱効率が悪い住宅を無くすための国の活動ですが、フランスのE以降の住宅は住宅の17%に相当するのは520万戸だそうで、これほどのリノベーションの市場があると考えると工事業者は忙しいはずですね。
知人に聞いたところによると、EとFの診断が出ている物件は不動産屋さんが取り扱ってくれなくなる為に、大家は工事の予約を工務店にしていますが工事は一年待ちとのこと。
そしてきっと一年待っても工事は始まらないと言うことをフランス人は知っています。


パリでリノベーション工事始めました
パリ6区で日本の伝統建材の畳や和紙を販売する店「BOLANDO」を運営しているのですが、ご自宅をリノベーション予定のお客さんがお店にいらっしゃいます。畳や和紙を部屋の中に取り入れたいと言うことで、物件の現地確認に行くこともあるのですが、これが私としてはとても楽しみなのです。
工事中またはお住まい中のお宅訪問をし、現地確認をして提案書と見積書を提出しご発注いただくこともあります。
納品後は完成したご自宅に呼んでいただくこともあり、今後は日本で主業務としてやっていた、設計とインテリアデザイン、工事も合わせてパリで仕事をしていきたいと思っています。
内装デザイン、空間設計は夏水組にご相談ください。日本の家でもパリの家でもどちらでも対応可能です。日本での工事は夏水組が長年付き合いをしている有能な工事業者に依頼し工事監理は日本にいる弊社スタッフが行います。フランスでの工事はBOLANDOのパートナーの工事業者が行い工事監理もBOLANDOで行います。
何から始めたら良いかわからないという方は
インテリアコーディネート相談にお申し込みいただければ坂田夏水がオンラインでご相談をお伺いいたします。